2013/02/15

代表者メッセージ

 一次産品の需給バランスの不均衡や世界的な食糧不足といったグローバルな観点からも、食料自給率の低下、そして多大な平地を占める農地の荒廃といったドメスティックな観点からも、さまざまな大問題が内包していると言える時代の中で、近年、日本の農業を取り巻く環境は、ますます激変の模様を呈してきました。

 このような時代の中においても、商工業に負けないだけの努力を持って、ものづくり、流通に取り組んでゆけば、農業は必ず他産業に劣らない存在意義を見出せるという想いと、そして何よりも、高品質で美味しく、安全で信頼の置ける農産物を必要とするお客様の願いの為に、私たち株式会社インスフィアファームは産声をあげました。

私たちの目標はまず第一に、取り扱っていただけるお客様、調理し付加価値を与えてくださるお客様、そして楽しんで召し上がるお客様に対し、農業のプロとして最大限の努力を払いお客様の満足を、食を通して徹底的に追求しものづくりに帰結させることであると考えます。

けれどまた同時に、企業の社会的責任、地域貢献は当然のものとしながらも、これまでの農業でははっきりと定着していない利益団体としての責務をもしっかりと見据え、ステークホルダーの皆様に満足いただけるようゴーイングコンサーンとして存在意義を持つことも、大きくそして重大な目標であると宣します。

他産業で当然とされるこれらのことが農業にも存在すべきでありまた存在可能だということを、私たちのお客様の満足と、私たちの成長をもって示し、ご理解いただくことを願いながら、

今日も耕し、種を播き、水を撒き、収穫し、お客様の元へお届けいたします。

皆々様のお役に立てるよう、ご期待に沿えるよう、懸命に努力いたします。至らぬ点などございましたら、何卒ご指導ご鞭撻のほどお願い申し上げます。

2007年1月15日
株式会社インスフィアファーム
代表取締役社長 松井 伸吾

<追記:大雪>

2018年2月上旬、当社本社農場のある福井県を、大変な豪雪が襲いました。
確かに北陸福井は雪の多い地域ではありますが、普段の雪は、多い時でも、50センチくらい積もり、3~4日で溶けてなくなる。しかも、それは1年に1度あるか、無いか。
そういう地域です。

その福井で、一気に140センチもの積雪がありました。37年ぶりだそうです。

下も前も上も、視界全てを白く染め、積もる音すらもしない静寂は、立ち尽くすだけでも簡単に絶望できる、そういう数日でした。降り始めからすでに県内の交通はすべて麻痺し、国道8号線に1500台もの車が2日間も立ち往生したのは、テレビでもご覧いただけたかと思います。

国道は立ち往生しましたが、通常の車通りの多い幹線道路ならば、雪が降る中でも前の車の轍を進めばゆっくりと走ることはできました。
けれども、普段でさえ車があまり通らないような農村部では、止まない雪が地面全体を埋め尽くし、どこが道なのかすらも、よくわからない。

農場へ行くには、積雪表面のかすかな窪みと、電柱や看板や建物との距離感の記憶だけを頼りに、道らしき場所を、溝にはまらないようにおそるおそる前進後進を繰り返しながら進むしかありませんでした。
夜通し降る雪の中、自分の車の轍はたったの10分で消えてしまい、帰れなくなりそうな恐怖から、来た道をすぐに、すごすごと戻る。
けれども決意しなおし、また農場へ行き、雪をかきわけ、設備の状況を確認する。

歪みの出てきたビニールハウスを確認し、屋根の雪が落ちるスペースを作り、それでも容赦ない圧倒的な周囲の真白に阻まれ、少し寝て、また農場へ行く。それをただ繰り返す、48時間。
農場の、特に倒壊させては会社の存続に関わるビニールハウスを維持する。それだけを考え、けれどもほとんど何もできずに右往左往する2日間でした。

雪が落ち着くと今度は、通る車の重みでできた厚さ30センチもの氷の板が道路を覆い、それが車の轍で少し溶け、タイヤを取られる車が多数。大渋滞があちこちで起きる。車で普段30分で済むところへ行くのに、3時間もの間、氷の波の上を、縦に横に激しく揺られながらハンドルを握りしめる。

そんな状態ではもちろん物流も、正常に機能するはずはありません。
一週間にわたりガソリンスタンドの給油は制限され、商店には商品の補充もなく、明るいうちに閉店。野菜を送ることができないどころか、仕事の再開に必要なものを調達することすらままなりませんでした。

ようやく道路の除雪が徐々に進み、日常生活には落ち着きを取り戻せても、久々のアスファルトを見せる幹線道路とは違い、農場の私たちは、白以外の色を見るための手立てがほとんどありません。
自ら農場へ行けるように農道の雪を掘り、通れる空間を作り続け、ようやく以前と同じように全てのビニールハウスの横まで収穫のために車でたどり着いたとき、気づけばすべての始まりの大雪から、2週間が経過していました。

お客様が待っている野菜を、収穫し、届ける術が全く無いまま。

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農業は、自然との闘いだと、よく言われます。
人智をもって、自然を制圧する。そういう闘いである、と。
この度の豪雪で、その考え方や必要性を、強く強く実感しました。

大雪にも絶対に壊れないような温室を作り、
充分な石油を備蓄し圃場に暖房を炊き、
自ら大型重機を操り農場への道を開拓し、
オフロードカーを準備し、自らの物流を確保する。

電気を各所に引き緊急時に備え発電設備も持ち、
植物の生育に必要な充分量の水も確保しておく。
光量不足を補うための電灯をたくさんつけ、
猛暑にも耐え一定の温度にする冷房機能を整える。

今回の豪雪に対抗し、あるいは他の自然災害を制圧しながら、事業として安定して農業を営むには、そうするしか手段が無いような気が、つい、してきます。
植物生産のための重装備工場。
そして何より、それらの装備を可能にするファイナンス。
自然を完全に制圧するための最終形は、そういったものだと考えてしまいます。

けれども同時に農業は、自然と喧嘩するだけでなく、自然と仲良くし、自然の恵みを受け取る産業でもあります。

今も残る雪の下には、春の芽吹きがあります。
夏が来れば、光と高温のおかげで実が熟し、
秋になれば、蓄えた養分が実りに変わります。
そして、いつもの冬なら、寒さで旨味を凝縮させた葉が育ちます。
そのことを、私たちは、よく知っています。

一年中同じ気象条件ではなく、暑さ寒さ、日照りや風雨などの、季節によって異なる自然条件があるからこそ、その自然からの、素晴らしい恵みを受け取ることができる。その恵みを、お客様の満足に変えることができる。
これこそが、工業とは異なる世界で存在する、農業の農業たる所以だと捉えています。
たまに起こる自然災害は、そのついでの、少し行き過ぎた寄り道に過ぎない、と考えることもできます。

農業という産業を、重装備の工場にしていき、自然を制圧するのか。それとも自然を受け入れ抵抗せず、良い面も悪い面も受け入れるのか。突き詰めて考えれば、農業の目指す方向はこの二つに集約されると思います。

この2つの異なる道について私たちは、豪雪を体験しても、否、体験したからこそなお、どちらか一方ではなく、両方の道を同時に目指していきます。

きっとこれからも来るであろう厳しい自然環境に対し、当然に工業的に準備される材料を使いながらも、少しずつより良い対処法を工夫し実践してゆく。
また時として、手に負えず、隠れすくみ、何とかやり過ごしながらも、自然からの恵みを最大限に受け取る。

自分たちの手の届く範囲で工夫を重ねて災害をしのぎつつ、それでもどうしようもない時は、すぐに復活できるよう、力を蓄え、暑さ寒さ、風や雪を受け入れながら、その自然のお陰で育ち来たる植物から恩恵を得る。

私たちは、そういう農業を目指します。

農業を、農業として。

そしてもちろん同時に、他産業に劣ることの無い、
お客様の満足を、目指して。

欲張りかもしれません。けれども、私たちならできる、そう信じ、そう決意して、これからも懸命に農業に取り組んでまいります。
今後とも、そして、あらためまして、どうぞよろしくお願いいたします。

この11年間、変わらない原点の想いである、上記代表メッセージに添えて
2018年 2月22日
株式会社インスフィアファーム
代表取締役社長 松井 伸吾